【コラム】①命を授かる尊さを学ぶ旅路へ

命めぐる時間 —— MOMANDコラム
不妊治療を経験したひとりの女性が綴る、命と人生についてのコラム

不妊治療という言葉から、どんなイメージを持たれるでしょうか。
努力、葛藤、痛み、そして希望——。
そこには、当事者でなければ語れない深い時間があります。

今回ご紹介するのは、不妊治療を経験した方が綴ったコラムです。
けれどその内容は、治療の経過や結果を語るものではありません。
「命とは何か」「生まれてくるということ」「自分の人生を生きるということ」——
私たち一人ひとりに静かに問いかけてくる、根源的なお話です。

治療の渦中で揺れ動いた心、思い通りにならない現実と向き合う中で見えてきたもの、そして、命をどう受けとめ、どう未来へ手渡していくのか。
その言葉は、とても個人的でありながら、読む人の人生にそっと重なります。

不妊治療を経験した方だけでなく、
今を生きるすべての人に読んでいただきたいコラムです。
どうぞ、ゆっくりと読み進めてみてください。

元々PCOSで生理不順、看護師で不規則な生活の長かった私は、

サプリも治療も計画性もなく、29歳で自然妊娠を経て

30歳で無事に健康な女児を産むことができた。

漠然と、『妊娠出産は自分にとって奇跡だ』と思っていた。

いや、その時はそう頭で考えるようにしていただけで、

本当にかけがえのない奇跡だと心から溢れ出す感情にはなっていなかった。

きっといわゆる不妊体質を持っていても、

また妊娠さえすればきっと元気な第二子を産める。

そんな根拠のない自信すらあったようにも思う。


産後の初めての第一子の育児や、

夫婦関係に悩みながらも試行錯誤の初めての専業主婦という4年間が、

振り返ってみるとあっという間に過ぎていた。

娘も幼稚園に入り、周りは当たり前のように兄弟姉妹を産み育てている。

きっと自然の感情だろうけれど、2人目が欲しい!自然に任せても妊娠しないから、

医療の力を借りればきっと大丈夫。

と、希望を胸に近所のレディースクリニックを予約した。

その時私は33歳、夫は41歳。

きっとまだ間に合う。

と思っていた。


言葉では、2人目がそろそろ欲しいね。と夫も言っていたので、

治療には協力してくれるものだも勝手に思い込んでいた。

いざ、最初のステップ。

タイミング療法を開始する指示が医師から出され、

指示された日にタイミングを取らないとならない。

それを夫に伝えるも、

ムードぶち壊しで萎える、

そんな義務的に必ずやらないとダメなのか、

と抵抗感を示された。

一方の私としては、

自然のタイミングに任せてダメだから医療の力を借りてるんだよ、

今更何を言ってるの?

私だって指定された日にすることを夫に伝えるのも緊張するけど

頑張ってるのに協力もしてくれないの?

私は排卵が年に12回もなく、

むしろ薬を飲んでやっとここぎつけた年に10回あるかないかのチャンスだったから、

逃したくなんてなかった。

上手くタイミングを取れずケンカのようになり、

寝室で声を殺して泣いた事が何度もあった。

子どもを授かるってこんなにストレス感じてする事なんだっけ?

そんな思いに

無理矢理蓋をして。

目次